
2016年の元旦、初日の出を鑑賞するため東海交通事業の城北線で毎年運転されている「初日の出号」に乗車することにした。この列車は城北線における数少ないイベント列車であり、利用者の少ないこの路線にあっては数少ない混雑する列車でもある。初日の出号には勝川発と枇杷島発の2本があり、今回は勝川発の列車に乗ってみることにした。
そのために早朝の名古屋駅から中央本線に揺られて、まだ夜のように暗い午前6時のJR勝川駅に降り立った。

同じ勝川駅ではあるけど城北線のそれはJRとは少しはなれた場所にあるので、寒さに肩をすぼめながら歩いて城北線の勝川駅へと向かう。辺りには同じ目的と思われる2〜3人が歩いている程度で静まりかえっていた。

見えてきた城北線の勝川駅は高架上にホームがひとつあるだけの小さな駅だった。階段を上がると既に「初日の出号」となる列車がエンジン音を響かせて待機していた。

階段を上った先がすぐホームとはなっておらず、長い通路を経てホームにたどりつくと、既に初日の出号のヘッドマークを掲げた枇杷島行きの列車がいた。といってもこれは目的の列車ではなく、枇杷島までいって枇杷島発の初日の出号になる列車だ。

吹きさらしの寒いホーム上をぶらぶらしながら時間を潰す。6時半をまわった頃には空が白みはじめ、雲ひとつない絶好の初日の出日和であることを視覚的に確認。
いつの間にか人が集まってきていて乗車位置には列ができつつある。日の出側のボックス席を確保したいのであれば6時半前には並んでおかないと厳しそうだ。私はもともと座ろうという気がなかったので、そんな行列を横目にのんびりしたものである。

そして6時40分頃にヘッドマークを掲げた初日の出号が入線してきた。すぐに乗車がはじまり並んでいた人たちが吸い込まれていく。雰囲気的にほとんどの人が初日の出だけを目的とした地元民の様子。私のように列車の写真撮影なんてしている人はわずかしかいない。

あらかた乗車が終わったところで私も乗車する。車内に入ったところで記念品という干支の置物を受け取る。これは先着順で全員がもらえるわけではないそうだが、最終的には余っていた感じだったので十分な数が用意されているようだ。

乗車券はどうしたらいいのかと思ったけど、車内で1日フリーきっぷを販売していたので購入しておく。今回は片道だけ乗車するだけなので普通に運賃を払ったほうが安上がりなのだが、記念にといったところだ。

車内は単行列車ということもあり足の踏み場もないような混みようだった。車両前方ではフリーきっぷ等の販売について案内をしており、それを購入しようと車両先頭部へと向かう人や戻る人がいるので大変だ。事前にホームで販売しておいたほうが混み合う車内を動き回る必要がなくなっていいのにと思う。

そうこうしていると列車は勝川駅を出発。途中駅でさらにお客を拾いつつ比良駅を出て少ししたところで停車した。ここで初日の出を待つのかと思いきや、障害物がありイマイチな場所だったようで、もう少し移動しますと案内が入り笑い声が溢れる。特に決まった場所があるわけではないらしい。
そして午前7時を少し回ったところでいよいよ太陽が顔を出した。城北線は高い高架上をゆく路線なので周囲の住宅に遮られることもなくなかなかといい眺め。

眺めとしてはいいのだけど、混雑する車内でスマホやカメラが一斉に数少ない窓に向けられることになるため、人混みの隙間から覗き見るような具合で、のんびり初日の出を楽しむような状況ではない。その点でいえばボックス席の窓側に座っていれば良さそうに思えるけど、それはそれで事前に用意されていたタオルを使って、人混みと暖房ですぐに曇ってしまう窓をこまめに拭き取るという仕事が与えられていて忙しそうだ。
なにはともあれ初日の出を見てしまえば、混雑するこの列車に乗りつづける理由はないので、次の小田井駅で逃げるように下車。

この駅は高圧線がちょっと邪魔ではあるものの、地上4階というやたらと高い位置にホームがあるため見晴らしが良い。ここでヒンヤリとした新鮮な空気を吸いつつ、のんびりと初日の出を眺めようという考えだ。
初日の出号から初日の出を拝みたいというような拘りがなければ、こういった城北線のホームから眺めるのは悪くない。実際この駅にも何人か先客がいた。

次の枇杷島行きが到着するまでホームで過ごす。やってきた列車は枇杷島発だった初日の出号の折り返しのようで、運転席の辺りには余った干支の置物が数個残されていた。
枇杷島駅に到着する頃にはすっかり日は高く昇り朝日が眩しい。ふと列車を見ると既にヘッドマークも取り外されており、いつもの城北線の姿に戻っていた。

単純に初日の出が見たいだけの人には、わざわざお金を払って混雑する車内から見る価値があるのか微妙かもしれないが、私のような初日の出号から初日の出を眺めるということを楽しむ向きには面白い列車であった。
(2016年01月01日)
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